四国のモテ車はこれだ!

四国の徳島県に、知人のフェラーリオーナーM氏がいる。
マンガ喫茶を2軒経営し、金はあるがヒマもあるので、フェラーリのオーナーズクラブを主宰している。
彼の悩みは仲間が少ないことだ。
地元でフェラーリを見かけたら、なんとしても追いかけて、クラブに勧誘するという涙ぐましい苦労を続けている。
四国クルマ事情を大調査
「何と言いましても少ないですからね……。獲物は見つけしだい捕獲します(笑)」
現在メンバーは15名ほどだ。
ちなみに四国地方のフェラーリの保有台数は以下の通り。
徳島県 31台
香川県 28台
愛媛県 30台
高知県 23台
合計112台。4県合計しても港区の3分の1に満たない。
この中から15名のメンバーを集めるのは大変だっただろう。
そんなM氏に、地元徳島県および高知県を取材してもらった。
徳島県には、ペンツを取り扱っているディーラーが一軒しかありません。そこを直撃しました。
M氏「去年、何台売れましたか?」
ヤナセ徳島店「204台です!」
M氏「けっこうすごいですね。祖谷(超山奥)でも売れますか?」
ヤナセ徳島店「祖谷地方には、現行モデルのお客様はいらっしゃいませんが、以前は190等、多くのユーザー様がいらっしゃいました。
新車でご購入いただいたユーザー様には、片道2時間の場所でも、無償でローダー引き取りいたしますよ!」
まさに地道な営業である。
ペンツは非常に高価な車だが、その名声はあまねく日本全土に広かっているおかげで、港区ほどではないにせよ、地方でもかなり売れているのがわかる。
四国のキャバ嬢人気ナンバーワンはホンダーライフ
ただ、実際にM氏経営のマンガ喫茶前(徳島県・石井町の国道192号線)で交通量調査をしてもらったら、総交通量841台のうち、カローラ37台(4.4%)、ペンツは旧々Sクラス1台、CLK1台の計2台(0.2%)だった。
港区ではベンツはカローラの6倍だが、徳島県・石井町では、それとは逆にカローラはベンツの20倍近かったのである。
「ただし徳島市内のキャバクラの若い女子ウケナンバーワン車種は先代ライフです。絶対です」(M氏)
ライフは、ホンダの主力軽自動車。
現在のモデルはデザインがやや複雑だが、先代はスッキリ単純で、徳島の女性には、今でもそっちの方がウケがいいという。
徳島のキャバクラでは軽自動車の先代ライフが最も人気なら、軽のメッカ・高知県場合はどうなのか。
今度は高知市内のはりまや橋で2時間、交通量調査をしてもらった。
総交通量 1954台
軽自動車 659台(34%)
輸入車 40台(2%)
ベンツ 8台(0.4%)
ご覧の通りの結果になった。高知市の中心地での調査だったので、軽自動車率は県平均(48.8%)よりずいぶん低く、ベンツ率はドンピシャ。
日本全国どこでも見受けられる平均的な結果だと言えるだろう。
ただM氏の話によれば、四国は高速道路での交通に特色があるという。
「四国の高速道路は、多くの区間が片側1車線で、たまに追越区間があるという地方独特の形態なのですが、1車線の間はゆっくり走り、追越車線の出現と同時に猛然と加速する車がかなり多いです。
加速性能の低い車に乗っている時にこれをやられると、追越ができずかなりムカつきます」
片側2車線以上の道路が限られている四国では、軽といえども追い越されることに不慣れなので、抜かれるとプライドが傷つくのである。
よって、―車線区間ではいつも通りのんびり走るが、追い越し区間では抜かれまいとアクセルを踏んでしまう。
こうして、ただでさえ追い越しのない四国で、さらに追越が減り、ちょっとくらい速い車にしたところで無意味な状況がより確固たるものになるのである。
都会の人はヒエラルキーでがんじがらめ
続いてM氏に、四国女性を対象に、「ベンツについてどう思うか」「同様に軽自動車は」をアンケート調査してもらった。
ベンツについては、「怖い人の乗り物」「乗ってる人がイケてない」「ガラ悪いオヤジ」「右ハンドルはニセモノ」など悪いイメージが8人。
「興味ない」「高級でレベルが違いすぎてよくわからない」と無関心が3人、「安全性が確か」「長持ちする」と肯定的だったのは、13名中わずか2名だった。
反対に軽自動車は、「経済的」「最近はかわいい」「普通車とかわらない」「燃費がいい」「駐車しやすい」「室内が広くなったし外見もよくなってるから、市内で乗るなら魅力的」「生活必需品」「彼氏が乗っててもOK」「私は軽しか乗れない」と、非常に詳しくしかも肯定的な意見が大半を占めていて、驚かされた。
クルマの半分が軽の国・高知において、県民は県民車・軽に満足している。
誰しもが乗ってるのだから恥ずかしいなどという意識ももちろんない。
ベンツに対しては、昔ながらの日本人的な反感を抱いているが、国産車ならすでに軽もそれ以外も意識の上では大して変わらず、共産主義的平等社会にかなり近づいていると言えるだろう。
高知県の車に対する意識は、決して格差ではなく、クルマを完全に道具として考え、それ以外のムダを排除する、究極の合理主義なのである。
したがって、高知県にはアストンマーティンは1台もない。
一方で、輸入車の中でだけヒエラルキーを築き、トラック・バスを含めたクルマ全体の1割近くをベンツが占め、「最低でもベンツに乗ってないと」というポリシーを持つ東京の一部地域の人々は、車がまだステイタスシンボルなのだという面に関しては、後進的なのだ。